渋谷365メンタルクリニック
渋谷365メンタルクリニック
2023.06.14

発達障害(ASD,ADHD,LD等)

近年、耳にすることが多くなった「発達障害」。 しかし、いまいちピンとこない、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。 発達障害は、見た目では判断がつきづらく、周囲から「変わった人だ」「自分勝手だ」とネガティブな印象を抱かれたり、理解を得られなかったりすることも多いかもしれません。 しかし、適切な支援を受けることで、特性の強みを活かして十分に力を発揮できます。 この記事では、発達障害で見られる特徴や症状、治療法などについて解説します。

発達障害とは

発達障害は、脳の発達や機能的な問題が原因で、日常生活や社会生活に支障が出る状態のことです。 発達障害者支援法第2条によって「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。 発達障害で見られる症状や発達障害の種類について詳しく解説します。

発達障害で見られる症状

発達障害で見られる症状には、年齢や環境によってさまざまな特徴があります。 一般的に対人関係の構築や他者とのコミュニケーションが苦手なことが多い傾向にありますが、一方で優れた能力を発揮することがあるのも特徴です。 発達障害の特性が原因で、周囲の人たちから理解されず「変わっている人」や「自分勝手な人」などとネガティブなイメージをもたれることも少なくありません。 そのため、本人はストレスを溜め続け、最終的にうつ病や不安障害などの二次障害につながることもあります。

発達障害の種類

発達障害は、主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の大きく3種類に分類されます。 自閉スペクトラム症(ASD)は、ASDは英名「Autism Spectrum Disorder」の略語で、自閉症や広汎性発達障害、アスペルガー症候群などをひとつにまとめた総称です。 注意欠如・多動症(ADHD)は、英名「Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder」の略語で、「不注意」「多動性」「衝動性」を特徴とする発達障害です。 学習障害(LD)は英名「Learning Disabilities」の略語で、学習上の特定の能力に困難が生じます。 そのほか、本人の意志とは関係なく身体の動きや発声を繰り返す「チック症」や、滑らかに話せない発話障害「吃音」も発達障害のひとつです。

発達障害の症状

次に、発達障害でみられる症状やサイン・兆候について、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)に分けて詳しく解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)の症状

自閉スペクトラム症(ASD)では、子供の頃には気づかれず、社会に出てから人間関係が複雑化したり、臨機応変な対応を求められるシーンが増えたりすることにより障害が発覚するケースも目立ちます。
自閉スペクトラム症では、以下のような症状が現れます。

人とのコミュニケーションや人間関係構築が苦手

自閉スペクトラム症(ASD)では、相手の言葉の微妙なニュアンスを読み取れない、視線を合わせられない、表情が乏しいなどの症状が見られることがあります。 そのため、人とのコミュニケーションで誤解を招きやすく、人間関係におけるストレスや悩みを抱えていることも少なくありません。

こだわりが強い

自閉スペクトラム症(ASD)では、こだわりの強さも特徴的な症状としてあげられます。 具体的には、小さな変化にも抵抗感を感じる、規則的な順序や行動を好む、特定の物・場所に強い執着があるなどです。 こだわりの強さから臨機応変に対応することが苦手なため、周囲からは「融通がきかない人」と思われがちです。

感覚過敏もしくは鈍感

特定の感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)に対して過敏性、もしくは鈍感性が見られるのも、自閉スペクトラム症(ASD)の症状のひとつです。 たとえば、サイレン音や電話の着信音などの特定の音に対して過剰に反応する、話しかけられても気付かない、いつも同じ服を着たがるなどの特性が見られる傾向があります。

注意欠如・多動症(ADHD)の症状

注意欠如・多動症(ADHD)では、以下のような症状が見られます。

不注意

注意欠如・多動症(ADHD)でよく見られる症状は、「不注意」です。 たとえば、忘れ物が多い、ミスが目立つ、約束や期限を守れないなどです。 そのため、周囲から「注意不足だ」「ミスが多い」と叱責されてしまうことも珍しくありません。

多動性

注意欠如・多動症(ADHD)の症状では「多動性」もよく見られ、じっとしていることが苦手です。 具体的には、貧乏ゆすりをする、よくしゃべる、興味の対象以外への集中力が乏しく落ち着きがないなどの特徴があります。 一方で、興味の対象に対しては集中力が続く一面もあり、本人の好きな分野・得意な分野では優れた能力を発揮することもあります。

衝動性

優先順位を決めるのが苦手、よく考えずに発言や行動を起こしてしまうといった「衝動性」も注意欠如・多動症(ADHD)の症状のひとつです。 衝動性は、対人関係や行動において問題となることもありますが、一方で行動力や決断力に優れているとよい評価につながることもあります。 注意欠如・多動症(ADHD)では、不注意の特性が強かったり、多動・衝動の特性が強かったりと、人によって症状の出方が異なります。

学習障害(LD)の症状

学習障害(LD)では、知的発達に遅れを認めないものの、「読む」「書く」「話す」「聞く」「計算・推論する」のうち、1つ以上の能力に困難が生じます。 学習障害(LD)では、「読み書き障害」と「算数障害」の2つに大きく分類されます。

読み書き障害

読み書き障害では、日常会話には問題がないものの、「読むこと」と「書くこと」に困難が生じます。 「読むこと」に障害が生じている場合は、「書くこと」にも障害が生じるのが一般的です。 「読むこと」に障害が生じる場合では、文章を読むときに1文字ずつ追って読む傾向があり、音読の速度が極端に遅かったり、文章の内容を理解できなかったりします。 「書くこと」に障害が生じているケースでは、文字のバランスがとれない、文字の形を捉えるのが苦手、書き写しの速度が遅いなどの症状が出ます。

算数障害

算数障害では、数の概念や計算が習得できない、文章問題を解くのが困難であるなどの症状が出ます。 これは知的能力が低いことが原因ではなく、認知能力のアンバランスさが原因です。 大人になってからも、数字を覚えるのが苦手だったり、暗算が苦手だったりするため、社会生活のなかで困難が生じるケースも少なくありません。

発達障害のサイン・兆候

発達障害のサイン・兆候は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)でそれぞれ異なります。 それぞれのサイン・兆候についてまとめます。

自閉スペクトラム症(ASD)のサイン・兆候

自閉スペクトラム症(ASD)では、早くて1歳ごろから目を合わせない、指差しをしない、 言葉の発達が遅い、感覚過敏などのサイン・兆候が現れます。 保育園や幼稚園に入ると、集団行動が苦手、ひとり遊びが多いなど、人との関わり方に特性が現れ出します。 そのほか、自身の好きなキャラクターや電車など、興味のあるものに何時間も熱中する傾向があるのも特徴です。

注意欠如・多動症(ADHD)のサイン・兆候

注意欠如・多動症(ADHD)のサイン・兆候は主に12歳以前の学童期頃から現れ、落ち着きがない、席を離れることが多い、順番を待てない、大人しく遊ぶことが難しいなどの特性が現れます。 また、ミスが多かったり、やるべきことをやり遂げられなかったりすることも多く、日常生活を送るうえで困難に直面しやすいため、自尊心が傷付いてしまっているケースもしばしば見受けられます。

学習障害(LD)のサイン・兆候

学習障害(LD)では、幼少期頃から言葉を話すのが遅い、文字を覚えるのが遅い、手先が極端に不器用などのサイン・兆候が現れます。 小学校にあがると本格的に学習が始まり、文章を読むことが極端に苦手、文字をバランスよく書けない、数を数えられない、計算ができないなどのわかりやすいサイン・兆候が現れるようになります。

発達障害の治療

発達障害の治療は、障害そのものを「治すこと」ではなく、特性に合わせて「生きづらさを軽減していく」ことが目的です。 発達障害の治療の種類や流れについて解説します。

種類

発達障害の治療方法は、「心理教育」「環境調整」「薬物療法」の3種類に分けられます。

心理教育

発達障害の治療では、まずそれぞれの特性に合わせて社会に適応していくための対処方法を習得する「心理教育」を行います。 心理教育では、はじめに自分自身のもつ障害の特性について理解を深めることからスタートします。 発達障害では、診断名が同じでも、特性は人それぞれ異なるためです。 次に、その特性に対して有効なセルフコントロール方法を習得していきます。 具体的には、対人関係に悩みのある場合はコミュニケーション方法を学ぶ、感情的になりやすい場合は感情のコントロール方法を学ぶなどです。

環境調整

環境調整では、周囲の人から自身の発達障害の特性について理解してもらい、支援してもらいます。 家族や友人など周囲の人に自身の特性を伝え、話し合いながら、生活しやすくなるような環境を整えてもらいましょう。 また、発達障害をもつ人は、学校や企業に、本人の特性に合わせた配慮を求めることができます。 これを、「合理的配慮」と言い、学校側や企業側は、障害者差別解消法第8条第2項により、可能なかぎり配慮の求めに対応することが義務付けられています。 ただし、合理的配慮の範囲については、発達障害をもつ人の一方的な要求が通るわけではもちろんありません。 双方にとって過度な負担にならないように、話し合いによって決められます。

薬物療法

自閉スペクトラム症(ASD)と学習障害(LD)では有効な薬物療法はまだありませんが、注意欠如・多動症(ADHD)では、主に使用されている4つの有効なお薬(ストラテラ、インチュニブ、コンサータ、ビバンセ)があります。 ただし、これらのお薬はあくまで心理教育や環境調整の補助として処方されるもので、根本的な治療を目指すものではありません。 また、発達障害では、二次障害(うつ病や不安障害)が出る人も少なくありません。 そのため、障害の特性によって生じたストレスを軽減するために薬物療法を用いることもあります。

流れ

発達障害の治療は、診断→心理教育・環境調整→(必要に応じて)薬物療法という流れで行います。 幼少期の早い段階で発達障害が発見された場合は、「療育(発達支援)」を受けることも可能です。 療育では、将来、社会的に自立した生活を送ることを目指し、必要な能力を身に着けられるようなトレーニングを受けられます。

まとめ

近年、発達障害に対する認知度や理解度が高まっており、わたしたちにとってより身近なものとして認識されつつあります。 しかし、一方で、社会全体における発達障害の人たちへの配慮や支援体制などについては、まだまだ十分な理解があるとは言えないのが現状です。 発達障害では、本人が困りごとへの対処法を習得していくことももちろん必要ですが、周囲の理解やサポートも非常に重要になってきます。 発達障害をもつ人たちにとっても、そうでない人たちにとっても、お互いが気持ちよく社会生活を送れるような環境づくりを目指していくことが大切です。 お困りごとがあるようであれば、まずは当クリニックにご相談ください。
近年、耳にすることが多くなった「発達障害」。 しかし、いまいちピンとこない、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。 発達障害は、見た目では判断がつきづらく、周囲から「変わった人だ」「自分勝手だ」とネガティブな印象を抱かれたり、理解を得られなかったりすることも多いかもしれません。 しかし、適切な支援を受けることで、特性の強みを活かして十分に力を発揮できます。 この記事では、発達障害で見られる特徴や症状、治療法などについて解説します。

発達障害とは

発達障害は、脳の発達や機能的な問題が原因で、日常生活や社会生活に支障が出る状態のことです。 発達障害者支援法第2条によって「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。 発達障害で見られる症状や発達障害の種類について詳しく解説します。

発達障害で見られる症状

発達障害で見られる症状には、年齢や環境によってさまざまな特徴があります。 一般的に対人関係の構築や他者とのコミュニケーションが苦手なことが多い傾向にありますが、一方で優れた能力を発揮することがあるのも特徴です。 発達障害の特性が原因で、周囲の人たちから理解されず「変わっている人」や「自分勝手な人」などとネガティブなイメージをもたれることも少なくありません。 そのため、本人はストレスを溜め続け、最終的にうつ病や不安障害などの二次障害につながることもあります。

発達障害の種類

発達障害は、主に自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の大きく3種類に分類されます。 自閉スペクトラム症(ASD)は、ASDは英名「Autism Spectrum Disorder」の略語で、自閉症や広汎性発達障害、アスペルガー症候群などをひとつにまとめた総称です。 注意欠如・多動症(ADHD)は、英名「Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder」の略語で、「不注意」「多動性」「衝動性」を特徴とする発達障害です。 学習障害(LD)は英名「Learning Disabilities」の略語で、学習上の特定の能力に困難が生じます。 そのほか、本人の意志とは関係なく身体の動きや発声を繰り返す「チック症」や、滑らかに話せない発話障害「吃音」も発達障害のひとつです。

発達障害の症状

次に、発達障害でみられる症状やサイン・兆候について、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)に分けて詳しく解説します。

自閉スペクトラム症(ASD)の症状

自閉スペクトラム症(ASD)では、子供の頃には気づかれず、社会に出てから人間関係が複雑化したり、臨機応変な対応を求められるシーンが増えたりすることにより障害が発覚するケースも目立ちます。
自閉スペクトラム症では、以下のような症状が現れます。

人とのコミュニケーションや人間関係構築が苦手

自閉スペクトラム症(ASD)では、相手の言葉の微妙なニュアンスを読み取れない、視線を合わせられない、表情が乏しいなどの症状が見られることがあります。 そのため、人とのコミュニケーションで誤解を招きやすく、人間関係におけるストレスや悩みを抱えていることも少なくありません。

こだわりが強い

自閉スペクトラム症(ASD)では、こだわりの強さも特徴的な症状としてあげられます。 具体的には、小さな変化にも抵抗感を感じる、規則的な順序や行動を好む、特定の物・場所に強い執着があるなどです。 こだわりの強さから臨機応変に対応することが苦手なため、周囲からは「融通がきかない人」と思われがちです。

感覚過敏もしくは鈍感

特定の感覚(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)に対して過敏性、もしくは鈍感性が見られるのも、自閉スペクトラム症(ASD)の症状のひとつです。 たとえば、サイレン音や電話の着信音などの特定の音に対して過剰に反応する、話しかけられても気付かない、いつも同じ服を着たがるなどの特性が見られる傾向があります。

注意欠如・多動症(ADHD)の症状

注意欠如・多動症(ADHD)では、以下のような症状が見られます。

不注意

注意欠如・多動症(ADHD)でよく見られる症状は、「不注意」です。 たとえば、忘れ物が多い、ミスが目立つ、約束や期限を守れないなどです。 そのため、周囲から「注意不足だ」「ミスが多い」と叱責されてしまうことも珍しくありません。

多動性

注意欠如・多動症(ADHD)の症状では「多動性」もよく見られ、じっとしていることが苦手です。 具体的には、貧乏ゆすりをする、よくしゃべる、興味の対象以外への集中力が乏しく落ち着きがないなどの特徴があります。 一方で、興味の対象に対しては集中力が続く一面もあり、本人の好きな分野・得意な分野では優れた能力を発揮することもあります。

衝動性

優先順位を決めるのが苦手、よく考えずに発言や行動を起こしてしまうといった「衝動性」も注意欠如・多動症(ADHD)の症状のひとつです。 衝動性は、対人関係や行動において問題となることもありますが、一方で行動力や決断力に優れているとよい評価につながることもあります。 注意欠如・多動症(ADHD)では、不注意の特性が強かったり、多動・衝動の特性が強かったりと、人によって症状の出方が異なります。

学習障害(LD)の症状

学習障害(LD)では、知的発達に遅れを認めないものの、「読む」「書く」「話す」「聞く」「計算・推論する」のうち、1つ以上の能力に困難が生じます。 学習障害(LD)では、「読み書き障害」と「算数障害」の2つに大きく分類されます。

読み書き障害

読み書き障害では、日常会話には問題がないものの、「読むこと」と「書くこと」に困難が生じます。 「読むこと」に障害が生じている場合は、「書くこと」にも障害が生じるのが一般的です。 「読むこと」に障害が生じる場合では、文章を読むときに1文字ずつ追って読む傾向があり、音読の速度が極端に遅かったり、文章の内容を理解できなかったりします。 「書くこと」に障害が生じているケースでは、文字のバランスがとれない、文字の形を捉えるのが苦手、書き写しの速度が遅いなどの症状が出ます。

算数障害

算数障害では、数の概念や計算が習得できない、文章問題を解くのが困難であるなどの症状が出ます。 これは知的能力が低いことが原因ではなく、認知能力のアンバランスさが原因です。 大人になってからも、数字を覚えるのが苦手だったり、暗算が苦手だったりするため、社会生活のなかで困難が生じるケースも少なくありません。

発達障害のサイン・兆候

発達障害のサイン・兆候は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)でそれぞれ異なります。 それぞれのサイン・兆候についてまとめます。

自閉スペクトラム症(ASD)のサイン・兆候

自閉スペクトラム症(ASD)では、早くて1歳ごろから目を合わせない、指差しをしない、 言葉の発達が遅い、感覚過敏などのサイン・兆候が現れます。 保育園や幼稚園に入ると、集団行動が苦手、ひとり遊びが多いなど、人との関わり方に特性が現れ出します。 そのほか、自身の好きなキャラクターや電車など、興味のあるものに何時間も熱中する傾向があるのも特徴です。

注意欠如・多動症(ADHD)のサイン・兆候

注意欠如・多動症(ADHD)のサイン・兆候は主に12歳以前の学童期頃から現れ、落ち着きがない、席を離れることが多い、順番を待てない、大人しく遊ぶことが難しいなどの特性が現れます。 また、ミスが多かったり、やるべきことをやり遂げられなかったりすることも多く、日常生活を送るうえで困難に直面しやすいため、自尊心が傷付いてしまっているケースもしばしば見受けられます。

学習障害(LD)のサイン・兆候

学習障害(LD)では、幼少期頃から言葉を話すのが遅い、文字を覚えるのが遅い、手先が極端に不器用などのサイン・兆候が現れます。 小学校にあがると本格的に学習が始まり、文章を読むことが極端に苦手、文字をバランスよく書けない、数を数えられない、計算ができないなどのわかりやすいサイン・兆候が現れるようになります。

発達障害の治療

発達障害の治療は、障害そのものを「治すこと」ではなく、特性に合わせて「生きづらさを軽減していく」ことが目的です。 発達障害の治療の種類や流れについて解説します。

種類

発達障害の治療方法は、「心理教育」「環境調整」「薬物療法」の3種類に分けられます。

心理教育

発達障害の治療では、まずそれぞれの特性に合わせて社会に適応していくための対処方法を習得する「心理教育」を行います。 心理教育では、はじめに自分自身のもつ障害の特性について理解を深めることからスタートします。 発達障害では、診断名が同じでも、特性は人それぞれ異なるためです。 次に、その特性に対して有効なセルフコントロール方法を習得していきます。 具体的には、対人関係に悩みのある場合はコミュニケーション方法を学ぶ、感情的になりやすい場合は感情のコントロール方法を学ぶなどです。

環境調整

環境調整では、周囲の人から自身の発達障害の特性について理解してもらい、支援してもらいます。 家族や友人など周囲の人に自身の特性を伝え、話し合いながら、生活しやすくなるような環境を整えてもらいましょう。 また、発達障害をもつ人は、学校や企業に、本人の特性に合わせた配慮を求めることができます。 これを、「合理的配慮」と言い、学校側や企業側は、障害者差別解消法第8条第2項により、可能なかぎり配慮の求めに対応することが義務付けられています。 ただし、合理的配慮の範囲については、発達障害をもつ人の一方的な要求が通るわけではもちろんありません。 双方にとって過度な負担にならないように、話し合いによって決められます。

薬物療法

自閉スペクトラム症(ASD)と学習障害(LD)では有効な薬物療法はまだありませんが、注意欠如・多動症(ADHD)では、主に使用されている4つの有効なお薬(ストラテラ、インチュニブ、コンサータ、ビバンセ)があります。 ただし、これらのお薬はあくまで心理教育や環境調整の補助として処方されるもので、根本的な治療を目指すものではありません。 また、発達障害では、二次障害(うつ病や不安障害)が出る人も少なくありません。 そのため、障害の特性によって生じたストレスを軽減するために薬物療法を用いることもあります。

流れ

発達障害の治療は、診断→心理教育・環境調整→(必要に応じて)薬物療法という流れで行います。 幼少期の早い段階で発達障害が発見された場合は、「療育(発達支援)」を受けることも可能です。 療育では、将来、社会的に自立した生活を送ることを目指し、必要な能力を身に着けられるようなトレーニングを受けられます。

まとめ

近年、発達障害に対する認知度や理解度が高まっており、わたしたちにとってより身近なものとして認識されつつあります。 しかし、一方で、社会全体における発達障害の人たちへの配慮や支援体制などについては、まだまだ十分な理解があるとは言えないのが現状です。 発達障害では、本人が困りごとへの対処法を習得していくことももちろん必要ですが、周囲の理解やサポートも非常に重要になってきます。 発達障害をもつ人たちにとっても、そうでない人たちにとっても、お互いが気持ちよく社会生活を送れるような環境づくりを目指していくことが大切です。 お困りごとがあるようであれば、まずは当クリニックにご相談ください。