睡眠障害・不眠症は日本の国民病とも言われ、成人の約5人に1人が不眠に対してなんらかの悩みをもっていると言われています。
睡眠障害・不眠症を悪化させないためには、症状や原因を知り、適切な治療をすることが大切です。
本記事では、睡眠障害・不眠症の症状や原因、治療方法について解説します。
睡眠障害・不眠症とは
睡眠障害・不眠症とは、長期にわたって睡眠に問題があり、日中のパフォーマンスが低下してしまう病気のことです。 加齢とともに増加傾向があるのも特徴で、日本では成人の30〜40%が何らかの不眠症状を抱えていると言われています。 睡眠障害・不眠症の症状が続くと、倦怠感、集中力・思考の低下、食欲の低下などの心身の不調が現れ、普段の生活に悪い影響が出ます。 また、睡眠障害・不眠症では、眠れないことに対する焦りや恐怖を感じる「不眠恐怖」が生じやすく、さらなる不眠につながってしまうという悪循環に陥りやすいのも特徴です。 自身の睡眠の問題に気がついたら、早期に適切な治療を受けることをおすすめします。睡眠障害・不眠症で見られる主な症状
睡眠障害・不眠症は、「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプに分けられます。 それぞれの症状や特徴について説明します。入眠障害
入眠困難とは、寝つきが悪い症状のことを指し、睡眠障害・不眠症のなかで特に多く見受けられる症状です。 入眠障害に悩まされている人は、眠る前に心配ごとや悩みごとをつい考えてしまう傾向があります。 眠りたくても眠れない状態は多くの人が経験しているもので、多少寝つきが悪いからといってすぐに睡眠障害・不眠症と診断されるわけてはありません。 日本睡眠学会では、入眠障害を「寝つくまでの時間が普段より2時間以上多くかかる状態」と規定していますが、実際には本人が寝付けないことに対して苦痛を感じているかどうかが重要な判断基準となります。中途覚醒
中途覚醒は「睡眠維持障害」とも呼ばれ、睡眠障害・不眠症の症状のひとつです。 寝つきには問題がないものの、真夜中に目が覚めてしまい、再び寝つくことが困難な症状を指します。 中途覚醒の症状の現れ方には個人差があり、目覚めてしまう時間帯や回数も人それぞれです。 加齢によって起こることも多く、そのほかストレスや夜間頻尿、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな要因が関係しているとされています。早朝覚醒
朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」も睡眠障害・不眠症の症状のひとつです。 早朝覚醒では、中途覚醒と同様に寝付きには問題がないものの、起床時間よりも2時間以上早くに目が覚めてしまい、再び寝つくことが困難になります。 早朝覚醒は、うつ症状の初期にも特によく見られるため、注意が必要です。 そのほか、加齢やストレス、更年期障害など、さまざまな要因があるとされています。熟眠障害
熟眠障害は、「熟眠不全」や「熟眠困難」とも呼ばれる睡眠障害・不眠症の症状のひとつです。 熟眠障害では、睡眠時間そのものは足りているにもかかわらず、眠りが浅く、熟睡感が得られないのが特徴です。眠りの途中で頻繁に目が覚め、睡眠が途切れ途切れとなってしまうこともあります。 熟眠障害の原因には、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害などの病気が関係していることもあるため、注意が必要です。睡眠障害・不眠症の原因
わたしたちにとって身近な睡眠障害・不眠症ですが、その原因はさまざまです。 ここでは、睡眠障害・不眠症の原因を5つに分けて詳しく解説します。ストレス
ストレスは、睡眠障害・不眠症の原因のひとつです。 ストレスによる不眠症状は、自律神経が乱れるために起こります。 自律神経には、活発に活動しているときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経があります。 特に意識をしなくても適切なバランスを保っているのが、自律神経が安定している状態です。 しかし、ストレスが引き金となり、交感神経が活発になり続けることで、自律神経のバランスが崩れてしまうことがあります。 すると、眠りにつくときに副交感神経よりも交感神経が優位になってしまい、不眠症状が現れるようになります。生活リズムの乱れ
生活のリズムの乱れも睡眠障害・不眠症の原因になります。 生活リズムの乱れの原因は、シフト勤務や夜勤、時差など、さまざまな環境による不規則な生活です。 生活リズムを整えたい場合は、休日の寝だめもおすすめできません。平日に睡眠不足が続いていても、できるだけ決まった時間の睡眠をとるように心がけましょう。 夜勤がある人は、休憩時間に少しでも仮眠をとるのがおすすめです。 午前中に睡眠をとる必要がある場合は、できるだけ光を遮断し、落ち着いて睡眠がとれるような寝室環境を整えることが大切です。こころの病気
こころの病気が睡眠障害・不眠症の原因となることも少なくありません。 慢性的に不眠に悩まされている人の3分の1から半数くらいは、何らかのこころの病気をもっていると言われています。 不眠症状を伴う精神疾患としてあげられるのは、うつ病をはじめ、統合失調症、不安神経症などです。 慢性的に不眠症状がある場合は、抑うつ症状や意欲の低下などが続いていないか、こころの状態にも注意してみてください。からだの病気
睡眠障害・不眠症は、からだの病気が原因となることもあります。 具体的には、外傷や関節リウマチ、高血圧や心臓病、呼吸器疾患などの病気が原因となるケースです。 これらの病気では、痛み、苦しさ、咳などの不快な症状が原因で寝付けなくなり、不眠症状が出ることがあります。 よって、これらの原因をまず治療することで、不眠症状の改善が期待できます。加齢
睡眠障害・不眠症では、加齢が原因となるケースも見逃せません。 歳をとると不眠症状を訴える人が増える傾向があり、60歳以上の人では半数以上が不眠の悩みを抱えているとされています。 加齢による不眠の原因には、日中の活動量の低下、生活習慣病や基礎疾患、ホルモン分泌の影響などがあげられます。 対策としては、太陽の光を浴びること、日中にしっかり身体を動かすことなどが効果的です。 体内リズムが整うだけでなく、生活習慣病の予防にもつながります。睡眠障害・不眠症の治療
睡眠障害・不眠症を治したい人は、専門家による適切なサポートを受けながら治療をしていくのが近道と言えます。 ここでは、睡眠障害・不眠症の治療の種類や流れについて説明します。種類
睡眠障害・不眠症の治療は、「薬物療法」「非薬物療法」の2種類に分けられます。薬物療法
睡眠障害・不眠症における薬物療法では、睡眠薬を用いて治療を行います。 現在、主に使用されている治療薬の種類は、「GABA受容体作動薬」「メラトニン受容体作動薬」「オレキシン受容体拮抗薬」の3つです。 それぞれの特徴は下記のとおりです。睡眠薬の種類 | 特徴 |
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GABA受容体作動薬 | 脳の働きを低下させて催眠作用をもたらす 即効性はあるが、長期間内服するとやめづらいと感じることも時にある |
メラトニン受容体作動薬 | 体内時計のリズムを整えて自然な眠気をもたらす 依存性が非常に少ないが、即効性はない |
オレキシン受容体拮抗薬 | 脳の覚醒物質の働きを弱めて自然な眠気をもたらす 依存性が少なく、即効性が期待できる |
非薬物療法
治療薬を使わない「非薬物療法」では、生活習慣の見直しを行い、認知行動療法を用いて症状の改善を目指します。 【生活習慣の見直し】 生活習慣を見直すうえで大事なポイントは、食生活や運動習慣の改善です。 加えて、就寝前にカフェインやアルコールの摂取は控える、寝室には防音・遮光対策も取り入れるなどを実践し、眠りにつきやすい寝室環境を整えます。 【認知行動療法】 認知行動療法では、主に睡眠制限法や刺激制御法という方法を用い、睡眠に対する認知の歪みを修正していきます。 認知行動療法は睡眠障害・不眠症治療に対する有効性がすでに確認されており、専門家の指導のもとで正しく行うことで高い効果が期待できます。- 睡眠制限法・・・わざと睡眠時間を短く制限することで「寝なくてはいけない」という焦りを減らし、不眠恐怖を抑えていく治療法です。睡眠時間は減少するものの、睡眠の質が向上するため、熟睡感が得られます。
- 刺激制御法・・・眠くなったときにだけ寝床に入るようにする方法です。寝床に入っても寝付けない場合は、すぐに寝床から出て別の部屋に向かいます。